地質科学概論Iの概要 †
現代人のリテラシー(基礎教養)としての地球に関する基礎知識を修得し,人類が住むことのできる環境を造り出した惑星地球のシステムを理解することを目的としている。地質科学概論Iでは地球の表層と大気・海洋の構成・構造と循環に関する基本的な事柄について解説し,地球環境の成り立ちと変動について,地質科学的観点から理解を深める。
はじめに †
- 配布資料:
- 0.はじめに
第1章 人類と地球の環境 †
- 惑星は地球型惑星と巨大惑星の二つに分類される
- 地球型惑星は岩石と金属で構成される
- 地球型惑星の表層環境は4つの作用で変化し続ける:
- 地球は太陽系唯一の水の星
- 配布資料:
- 1.人類と地球の環境
第2章地球表層の温度 †
惑星の表面温度を決めるのは(1) 太陽放射・(2) アルベド・(3) 温暖化ガス
- 太陽放射は太陽活動・太陽からの距離で変化
- アルベドは惑星表面の状態で変化
- 温暖化ガス組成は水・炭素の状態と惑星重力で変化
- 惑星表面温度と水蒸気量はポジティブ・フィードバックの関係
- 暴走温暖化:気温の上昇⇌水蒸気の増加
- 全球凍結:気温の低下⇌水蒸気の減少(アルベド増加)
- 配布資料:
- 2.地球表層の温度
第3章水と二酸化炭素の循環 †
- 水は海洋(96%)・氷河氷床(3%)・地下水(1%)として分布する
- 水は蒸発・降水・流入(河川・地下水)によって循環する
- 海水の蒸発量と降水・流入量は釣り合っている
- 海の面積は平衡状態
- 炭素は大気・生物・海洋・岩石に蓄積されている
- 炭素は陸上風化・プレート運動・火山活動によって循環している
- 地球の気候は炭素循環が安定化させている
- この循環の時間スケールは100万年以上
- 短い時間スケール(10-100年単位)では,海洋と植物が炭素を吸収する
- 配布資料:
- 3.水と二酸化炭素の循環
第11章地球の熱収支と大気の大循環 †
- 太陽放射は地球放射に対して低緯度で過剰・高緯度で不足
- 大気と海洋の熱輸送によって表層温度が均質化
- 境界は38°
- 大気は3つの対流セルで循環
- ハドレー・フェレル・極循環
- フェレル循環にはロスビー波が発生
- 配布資料:
- 11.地球の熱収支と大気の大循環
第12章海洋の構造と循環 †
- 海洋を水は3つのスケールで循環している
- 海流=数日〜数年
- 深層水循環=数千年
- 水・岩石反応=数千万年
- 海洋循環により酸素・炭素などの物質が地球全域に輸送される
- 配布資料:
- 12.海洋の構造と循環
第13章エルニーニョとモンスーン †
- 湧昇:深層水が湧き上がる現象
- 表層水がエクマン輸送で取り除かれることで発生
- 赤道湧昇・沿岸湧昇の二種類
- 海洋表層に栄養塩を提供⇒漁獲高に影響
- 海洋表層の水温に影響⇒世界の気候に影響
- エルニーニョ:東太平洋赤道域の表面水温が上昇する現象
- 原因:貿易風の減衰による赤道湧昇の減少
- エルニーニョ・ラニーニャのサイクル=南方振動
- 世界の異常気象の主要な原因
- モンスーン:夏冬で風向が逆転する現象
- 海陸の比熱の違いにより発生
- 夏は岩石が高温⇒大陸に低気圧
- 冬は岩石が低温⇒海に低気圧
- ヒマラヤ山脈がモンスーンを強化
- エルニーニョとモンスーンは相互に影響
- エルニーニョの発生⇒モンスーン降雨の減少
- モンスーンの弱化⇒エルニーニョ発生のきっかけ
- 配布資料:
- 13.エルニーニョとモンスーン
第14章気候変動 †
- 陸上に大規模な氷床が発達している時代を氷河時代(氷河期)と呼ぶ
- 氷河は特有の氷河地形を形成する
- 氷河時代の地球は激しい気候変動(氷期・間氷期)を繰り返す
- 氷河地形から2万年前には現在よりもはるかに大規模な氷床があったことがわかる
- 約300万年前より地球には周期的な気候変動が見られる
- 気候変動は地球公転軌道要素の変動による日照量変動(ミランコビッチ・サイクル)と一致する
- ただし日照量変動だけでは説明できない
- 大気CO2濃度など複数のメカニズムが気候変動を増幅させている
- 気候変動の主な原因
- (1)太陽放射の量の変動
- (2)地球の軌道要素の変動
- (3)地球内部からの熱と揮発成分の放出
- (4)地球上のテクトニックプロセスの変動
- (5)大規模火山活動
- 地球の気候には三つの安定状態がある
- 氷河時代・スノーボールアース・無氷河時代
- 地球気候には複数のポジティブ・ネガティブフィードバックが作用している
- ポジティブフィードバック効果が卓越すると気候ジャンプが起こる
- 配布資料1:
- 14-1. 気候変動1:氷期・間氷期変動
- 配布資料2:
- 14-2. 気候変動2:氷河時代と無氷河時代
第4章地球表層の構成と組成 †
第5章プレートテクトニクス †
第6章⽕⼭と噴⽕ †
第7章地震と断層 †
第8章⽇本列島の成り⽴ち †
第9章岩⽯の⾵化と⼟壌の形成 †
- 風化作用:岩石が分解・溶解する現象
- 岩石が分解=物理的風化作用
- 岩石が溶解=化学的風化作用
- 風化の結果として土砂(堆積物)が生じる
- 土壌:土砂と有機物の混合物
- 化学風化と溶脱によって土砂の組成が変化
- 気候に応じて異なるタイプの土壌が形成される
- 熱帯:ラテライト
- 温帯:褐色森林土
- 寒帯:ポドソル
- 配布資料:
- 9. 岩石の風化と土壌の形成
第10章堆積作⽤と堆積環境 †
- 土砂は山から深海まで流れて行く
- 地球の表層地形は土砂の流れが生み出す
- 深海へ達した土砂はプレート運動によってリサイクルされ,再び山から循環する
- 配布資料:
- 10. 堆積作用と堆積環境
第15章酸素の起源と⽣物の進化 †
- 生物と地球環境の共進化により大気組成は変化し続けている
- 酸素分圧は生物活動により増加
- 30-19億年前:シアノバクテリアによる大酸化イベント
- 3.5億年前:植物の陸上進出・森林の誕生
- 酸素濃度の増加により生物相が変化
- 酸素を利用する真核生物が進化
- 骨格を持つ大型多細胞動物が5.4億年前に登場
- 配布資料:
- 15. 酸素の起源と生物の進化
第16章⼈類による地球環境の変化 †
- 現生人類は約10万年前に誕生し,約1万年前に全世界へ広がった
- 気候の温暖化・安定化と人類文明の発達は一致
- 人類の移動と大型哺乳類の絶滅は一致
- 人類活動と地球環境変動には深い関連がある
- メソポタミア・イースター島・マヤ文明・アナサジなど多くの文明が自然破壊と気候変動により崩壊
- 現在の人類文明は持続可能性を問われている
- 配布資料:
- 16. 人類による地球環境の変化
参考文献 †
教科書 †
参考書 †
- Understanding Earth 7eds. (John Grotzinger, Thomas H. Jordan)
- 地球のダイナミクス(平 朝彦; 岩波書店)
- 地層の解読(平 朝彦; 岩波書店)
- 地球史の探求(平 朝彦; 岩波書店)
辞書 †
- 地学事典(地学団体研究会編; 平凡社)
- Glossary of Geology (Julia A. Jackson; American Geological Institute)
- Encyclopedia of Sediments and Sedimentary Rocks (Middleton Eds.; Kluwer Academic Publishers)