地質科学表層プロセス基礎論の概要

最新の地質科学的知見に基づいて,地球の表層で起こる物質循環と気候変動に関連したさまざまなプロセスについて講義する.地球表層を構成する堆積物の運搬・侵食・堆積ならびに堆積岩の形成・変化に関する基礎的概念を踏まえて,物質循環・気候変動・地形・テクトニクスに関連する諸現象を解説する.

1.堆積物/堆積岩の特徴1:堆積岩の成因

堆積物とは

  • 堆積物は山地での岩石風化・侵食や爆発的火山噴火によって生成される
  • 堆積物は山地から流体(水・大気)によって運搬される
  • 堆積物は沖積河川・海浜・大陸棚・前弧海盆・海溝・深海平原に堆積する
    • 活動的縁辺域→狭い陸棚・前弧海盆・海溝
    • 受動的縁辺域→広い陸棚・深海平原

様々な堆積物の組成

  • 珪質砕屑物(Siliciclastics):陸域・沿岸域
    • 石英・長石・岩片・粘土鉱物
  • 火山砕屑物(Volcaniclastics):活動的縁辺域
    • 火山ガラス・水冷破砕物・パミス・スコリア・火山豆石・自破砕物
  • 浅海成炭酸塩岩(Neritic Carbonates):熱帯の沿岸域
    • サンゴ・ウーライト・生物源砕屑物
  • 遠洋性堆積物(Pelagic sediments):遠洋域
    • 有孔虫・ナンノ化石・珪藻・放散虫・風成塵
  • 蒸発岩(Evaporite):乾燥地帯の閉鎖された海域
    • 岩塩・石膏
配布資料:
1.堆積物の成因

2.堆積物/堆積岩の特徴2:粒度・組織と分類

堆積岩の粒度

  • 粒径の定義
  • Phiスケール
  • 粒度と沈降速度

堆積岩の組織

  • 粒子形状(Grain shape)
  • 粒子間隙(Porosity)
  • パッキング(Grain packing)
  • 基質(Matrix)
  • セメント(Cement)
  • 粒子配列(Grain fabric)
配布資料:
2.堆積物の粒度と組織

堆積岩の分類

  • 岩質名(Lithologic name):組成+粒度+組織の3要素に基づいた岩石の名称
  • 堆積岩の岩質名は,修飾語+基本名で表される
    • 基本名は最も重要な要素を表現する
  • 珪質砕屑物と火山砕屑物の基本名:粒度
    • 例:細粒砂(fine sand)・凝灰岩(tuff)など
  • 浅海成炭酸塩岩の基本名:組織と粒度
    • 例:バウンドストーン(bound stone)・パックストーン(Packstone)など
  • 遠洋性堆積物の基本名:固結度と組成
    • 例:Nannofossil foraminifer ooze, Radiolarian chertなど
配布資料:
3.堆積岩の分類

3.堆積物/堆積岩の特徴3:単層とその構造その1

  • 単層とその成因
  • 底痕 (Sole structures)
    • 単層の底面に見られる構造
    • 流れが底面を侵食した痕跡
  • 級化・逆級化 (Grading/Inverse grading)
    • 単層内部で粒度が上下に変化する現象
    • 原因はさまざま.例えば混濁流の減衰を表す
配布資料:
4.単層とその構造1

4.堆積物/堆積岩の特徴4:単層とその構造その2

  • 葉理構造(初生構造)(Laminae: primary structures)
    • 斜交葉理や平行葉理などの薄い (<1cm) 面構造
    • ベッドフォームの移動によって作られる.かつての流向や流速をあらわす
  • 二次的構造 (Secondary structures)
    • 堆積後に形成される構造
    • 液状化・脱水によるコンボルート葉理など
  • 生痕 (Trace fossils)
    • 地層中に残される生物活動の痕跡
配布資料:
5.単層とその構造2

5.気候変動1:10万年スケールの気候変動

  • 気候システム
  • 古気候学とは?
  • 氷床の痕跡
  • 氷期-間氷期サイクル: 海底堆積物中の有孔虫δ18O
  • ミランコビッチ仮説

6.気候変動2:100-1000年スケールの気候変動

  • 古気候の読み解き方(古気候プロキシ)
  • ダンスガード・オシュガーサイクル& ハインリッヒイベント: アイスコアδ18O & IRD
  • ヤンガー・ドリアス・イベント
  • 花粉
  • バイオマーカー
  • アルケノン古水温計

7.気候変動3:歴史時代の気候変動

  • 古文書
  • 樹木年輪
  • 鍾乳石
  • 珊瑚

8.表層プロセス入門:地球表層を構成する物質と圏

  • 地球惑星表層環境は5つの圏(システム)からなる
    • 大気圏・水圏・氷圏・岩石圏・生物圏
  • 地球表層環境のサブシステムはフィードバックによって互いに影響を及ぼし合っている
    • 炭素循環:岩石圏と大気圏(気候)のネガティブフィードバック
    • アルベド効果:氷圏と大気圏のポジティブフィードバック
配布資料:
8.表層プロセス基礎論

9.地球表層の物質輸送プロセス1:風化とマスムーブメント

  • 風化作用には機械的風化と化学的風化がある
    • 機械的風化:生物活動・凍結破砕など
    • 化学的風化:溶脱・粘土鉱物の生成
    • 機械的風化は化学的風化を促進する
  • 土壌化作用は風化作用・物質移動により起こる
    • 風・水による運搬・溶脱作用により物質が失われる
    • 有機物・風成塵などの物質が付け加えられる
  • 土壌化作用は気候・生物活動・時間・母物質の影響を強く受ける
    • 古土壌(地層化した土壌)は古環境の指標となる
  • 土砂自体に直接働く重力によって駆動される土砂移動をマス・ムーブメントと呼ぶ
    • マス・ムーブメントの性質は斜面物質の物性・移動速度・移動の性質に応じて変化する
  • 斜面崩壊
    • 高速で岩石が崩壊しながらなだれ落ちる
  • 地すべり
    • 比較的ゆっくりと岩体が移動
    • 未固結の土砂⇒クリープまたはスランプ
  • 土石流
    • 土砂が流体(水)と混合し,衝突し合いながら流れ下る
配布資料:
9.風化とマスムーブメント

10.地球表層の物質輸送プロセス2:水循環・地下水・河川

  • 地球上のほとんどの水は海水(96%)
    • 淡水はわずか4%
    • 淡水は氷河・氷床がほとんど(約3%)
    • 流体の淡水はほぼすべて地下水(約1%)
    • 河川・湖沼はわずか0.009%
  • 地球上の凍っていない淡水の大部分(99%)は地下水として保持されている
  • 山地の涵養域から海洋へ向けて地下水は流動している
    • 流量は地下水面勾配に比例する(ダルシー則)
  • 地下水面と地表面が交わると地表への湧水が起こる
  • 河川システムは岩盤河川(谷)と沖積河川(流路・氾濫原)よりなる
  • 流路が水を集める範囲を流域とよぶ
    • 流域内の流路ネットワークは岩質・地形・履歴によって変化する
  • 流路の形態は網状河川と蛇行河川に大きく分けられる
    • 網状河川はより斜面勾配が大きい地域に発達する
  • 河川は水と同時に土砂を運搬する
    • 運搬様式には掃流と浮流がある
  • 土砂流量と水流量の比が河川勾配(堆積・侵食)を決める
    • 水・土砂流量が変化しなければ河川勾配は一定
配布資料:
10.水循環・地下水・河川

11.地球表層の物質輸送プロセス3:波浪と潮汐

  • 海岸・浅海では波浪・潮汐が堆積物を運搬している
  • 潮汐・気象(晴天・荒天)・海水準などの変動により浅海・海浜地形は常に変動している
  • 海水準・堆積物供給量・堆積物移動量に応じて海岸線も移動する
    • 山地・河川の変動は海岸へ伝播する
配布資料:
11.波浪と潮汐

12.地球表層の物質輸送プロセス4:氷河・氷床

  • 氷河・氷床は重力で駆動され流動する
  • 氷河侵食が氷河特有の地形を形成する
    • U字谷・カール・フィヨルドなど
  • 氷河・氷床は堆積物を運搬し特有の地層を形成する
    • モレーン・氷河湖堆積物・ドロップストーン
  • 氷河時代と無氷河時代では海洋・物質循環システムに大きな違いがある
配布資料:
12.氷河と氷床

13.地球表層の物質輸送プロセス5:風と砂漠

  • 風は地球表層の熱輸送を担う
  • 熱対流とコリオリの力により大気循環が生じる
    • 赤道の上昇気流
    • 砂漠地帯の下降流
  • 北緯・南緯30°近辺では下降流が生じる⇒砂漠地帯の形成
  • 乾燥地帯や流水の存在しない惑星では風が主要な土砂運搬作用となる
  • 運搬量の支配要因:風の強さ・粒子サイズ・土砂粒子の組成
  • 風はベッドフォームを形成する
    • デューン・リップル・Barchan・Linear Dune・Star Dune
  • ベッドフォームによる斜交層理や粒子の円磨度などが風成堆積物の指標となる
配布資料:
13.風と砂漠

14.地球表層の物質輸送プロセス6:海盆と深海底

  • 混濁流や海底地すべりが浅海域から深海へ堆積物を運ぶ
    • 嵐・洪水・津波・海底地すべり(地震)によって発生
  • 混濁流堆積物(タービダイト)の作る海底地形を海底扇状地という
  • 海底扇状地には河川状地形(海底チャネル)が発達することがある
    • タービダイトは典型的にはBouma sequenceを示す
  • タービダイトは有機物を地中に蓄える
    • 石油・天然ガスなど
    • 地球の炭素循環に影響
  • 陸源堆積物が届かない遠洋にはプランクトン遺骸・風成塵が堆積する
  • プランクトン殻の分布は生物の生息範囲と水深によって変わる
    • 高緯度域:ケイ酸塩殻のプランクトン遺骸
    • 低緯度域:炭酸塩殻のプランクトン遺骸
  • カルサイト補償深度(CCD)以深:炭酸塩が溶解
    • CCD・プランクトン生息範囲は地球史を通じて変動し続けている
    • 遠洋性堆積物は環境変動の指標となる
配布資料:
14.深海

15.地形発達とテクトニクス

  • 山脈は火山活動および構造運動(褶曲)によって形成される
  • 山脈が形成される現象を造山運動と呼び,形成されている場を造山帯とよぶ
    • 造山運動には大陸衝突型と沈み込み帯型の2種類がある
    • 沈み込み帯型は火成活動+構造運動
    • 大陸衝突型は初期に火成活動・後期は構造運動が卓越する
  • 造山運動と侵食作用にはフィードバックの関係がある
    • ネガティブ・フィードバック:山地勾配の増加による侵食作用の促進
    • ポジティブ・フィードバック:山地削剥による山地上昇の促進
配布資料:
15.地形発達とテクトニクス

レポート解答例・質問への回答

参考文献

参考書

  • Understanding Earth 7eds. (John Grotzinger, Thomas H. Jordan)
  • 堆積物と堆積岩(保柳康一・公文富士夫・松田博貴; 共立出版)
  • 地層の解読(平 朝彦; 岩波書店)
  • 地球表層の物質と環境(勘米良亀齢・水谷伸治郎・鎮西清高編; 岩波書店)
  • 砕屑物の研究法(公文富士夫・立石雅昭編; 地学団体研究会)
  • 地質学ハンドブック(加藤碵一・脇田浩二 総編集; 朝倉書店)
  • Sand and Sandstone (Pettifjohn, Potter and Siever; Springer-Verlag)
  • Earth Surface Processes, Landforms and Sediment Deposits (Bridge and Demicco; Cambridge)

辞書

  • 地学事典(地学団体研究会編; 平凡社)
  • 堆積学辞典(堆積学研究会編; 朝倉書店)
  • Glossary of Geology (Julia A. Jackson; American Geological Institute)
  • Encyclopedia of Sediments and Sedimentary Rocks (Middleton Eds.; Kluwer Academic Publishers)

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Last-modified: 2017-04-12 (水) 21:46:27 (491d)