堆積学IIIの概要

堆積構造の形成に関する理論と実験,堆積データの解析方法,堆積盆地の形成要因,シーケンス層序学の基本概念,地層の形成過程と海水準変動などに関する基礎を学ぶ

目的・目標

この講義は、地域における開発・保全・防災・環境などの問題に取り組み,社会に貢献するために,地球科学に関連する幅広い多様な分野の知識を習得し,多様な現場における問題解決に応用できる基礎知識を身につけることを目的としている(JABEEの学習目標(D)と(G)に相当する)。特に,(1)水流と密度流のダイナミクスと砕屑物輸送,(2)堆積構造の形成プロセスに関する理論と実験的解析手法,(3)堆積物の野外・室内における分析方法,(4)堆積盆地の形成プロセス,(5)海進・海退現象と海水準変動との関係,(6)シーケンス層序学の基礎など,将来の資源開発,環境問題,保全などに応用できる基礎知識の修得を目標とする。

授業計画・内容

「堆積」とはなんだろうか?:Exner方程式の意義

  • 「堆積」・「侵食」の定義=Exner方程式

\[ (1-\lambda_{p}) \frac{\partial \eta}{\partial t} = - \frac{\partial q_t}{\partial x} \]

  • Exner方程式からわかること
    • 流速・斜面傾斜の変化率が堆積・侵食を決める
    • 海岸侵食の原因
    • ユルストロム図はなぜ間違っているか
配布資料:
Exner方程式の意義

流体の挙動1:等流と流れの抵抗則

  • 水流の分類:等流・不等流(定常流・非定常流)
  • 力の釣り合い:等流は重力と摩擦力の釣り合いから考えることができる
  • 底面せん断応力と摩擦速度
  • 流れの抵抗則
配布資料:
等流と流れの抵抗則

流体の挙動2:エネルギー保存則

流体のエネルギー保存則はベルヌーイの法則と呼ばれる.エネルギー保存式と連続式を連立させて解くことで,さまざまな自然現象を理解ことができる.開水路の射流・常流の成因もエネルギー保存の観点から理解することができる.

配布資料:
エネルギー保存則

流体の挙動3:浅水方程式

流速を垂直方向に平均化することで定式化した流れの運動量保存則を,浅水方程式と呼ぶ.浅水方程式と連続式を連立させて解くことで,流体のさまざまな挙動を理解することができる.

配布資料:
流体の挙動:浅水方程式

流体の挙動4:水面形方程式

定常流の場合,浅水方程式と連続式から水面形方程式を導くことができる.水面形方程式を使えば,地形が水流の水面形に与える影響を理解することができる.

配布資料:
流体の挙動:水面形方程式

相似則と次元解析

堆積学の室内実験では,自然界とはまったく異なるスケールで自然現象を再現しようとする.なぜこのようなことが可能なのだろうか? 堆積学では,相似則に基づいて大きさスケールの違う実験系でも自然現象を再現することに成功している.

現象を支配する無次元数が等しければ,自然界と実験水槽では同じ現象が発生する.これが相似則である.複雑すぎて理論的な解析が不可能な現象であっても,次元解析によって有次元パラメーターから無次元数を作り出せば,実験に基づいて現象を予測する法則を発見することができる.次元解析は堆積学・水理学以外のあらゆる物理現象でも有効な研究手法であり,自然現象の実験・理論的解析を行う際には強力な武器となる.

配布資料:
相似則と次元解析

堆積物輸送1:掃流

  • 粒子が底面と頻繁に接触しながら移動する形式の堆積物輸送を掃流(Traction; bedload)と呼ぶ
    • 掃流には滑動(Sliding)・転動(Rotation)・跳動(Saltation)の三つの形式があり,通常は跳動がもっとも卓越する
  • 掃流輸送量はシールズ数(無次元剪断応力)と限界シールズ数(無次元粒子始動剪断応力)の関数となっている
  • 掃流輸送量を予測するため,数多くの公式が提案されている
    • 掃流砂量式は経験式・バグノルド型・アインシュタイン型理論 式(半経験式)に分類される.式は目的に合わせて選択すればよい
配布資料:
堆積物輸送機Я殞

堆積物輸送2:浮流

  • 浮流(Suspension)とは,堆積物粒子が乱流渦によって浮かびながら移動する運動様式のことを指す
  • 底面から巻き上げられて浮流状態となった堆積物粒子は,乱流渦によって流れ全体に拡散する
  • 河川の場合,浮流堆積物濃度分布は一般にラウス則に従う
  • 浮遊堆積物の運搬量保存式と連立させれば,浮流・掃流を同時に考慮するExner方程式を計算することができる
配布資料:
堆積物輸送供浮流

地形・流れ・堆積物の相互作用1: 河川の勾配

地層の形成(堆積)・侵食現象は地形・流れ・堆積物の相互作用として理解できる.

  • 地形・流れ・堆積物運搬に関する方程式を連立させ,解析的・数値的に解くことで地形変動は予測できる
  • 平衡河川の河床勾配は堆積物供給量が増えると増加し,水の 流量が増えると減少する
    • 人為的構造物・気候変動によって水・堆積物供給量は変化する
  • 河床勾配が変化すれば広範囲にわたって堆積・侵食作用が起こる
配布資料:
平衡河川

地形・流れ・堆積物の相互作用2:ベッドフォーム

  • 流れと堆積物の相互作用によってできる微地形をベッドフォーム(Bedform)と呼ぶ
  • 1方向流のベッドフォームには,リップル・デューン・プレーンベッド・アンティデューン・サイクリックステップなどがある
  • ベッドフォームのタイプは主に3つの要素(水深・流速・粒径)によって決まる.
    • 支配無次元数は3種類(例えばフルード数,シールズ数,粒子レイノルズ数)
  • 水面形との相互作用によって,ベッドフォームの進行方向は変わる
    • 射流ならば上流に進行(アンティデューン)・上流ならば下流へ進行(デューン)となることがExner方程式からわかる
配布資料:
ベッドフォーム

地形・流れ・堆積物の相互作用4:混濁流のダイナミクス

  • 浮遊堆積物の密度によって駆動される密度流を混濁流と呼ぶ
  • 深海底には混濁流が海底谷・海底チャネル・海底扇状地を形成している
  • 混濁流の作る地形は河川地形と類似している
  • 混濁流の挙動は密度修正フルード数に大きく支配される
    • 河川流と同様に射流・常流・跳水が存在する
    • 河川流よりも射流になりやすい
  • 混濁流は条件が整えば自己加速し,小規模な流れから大規模な流れへと成長することができる
配布資料:
混濁流のダイナミクス

レポート課題の解答例

追補:2次元角度データの統計的取り扱い

堆積学では,堆積構造・古流向・粒子配列のような角度データを取り扱うことがしばしばある.角度には通常の数値データと異なった性質があるため,角度データを取り扱うためには特有の統計学的テクニックを学ぶ必要がある.

ここでは,2次元角度データの基礎統計学として,

  1. データの表現方法:どうやって角度データをグラフに表せば良いのか?
  2. 記述統計:どうやって角度データを統計値(平均・分散)に要約するか
  3. 有意性の統計的検定:測定値は有意な優先配向方向を持つか?それともランダムか?
  4. 2標本間検定:2つのデータセットに相違があるか?
  5. 区間推定:母集団の平均方向はどんな範囲にあるか?

を学習する.

配布資料:
2次元角度データの統計的取り扱い

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Last-modified: 2010-10-07 (木) 02:14:31 (2990d)